『グッド・オーメンズ』 小説版を読んだので感想を書いてみる

レビュー記事
闇堂
闇堂

どうもこんにちは。何日かぶりですね!闇堂クロです。

 えー、恐れていた通りブログ更新は3日坊主となってしまいました。
 というのも私は色々なことに興味を持ちがちなのでエネルギーが散漫しがちなのです。
 更に言うと近々引っ越す予定でその手続きに追われていたり、原因不明の喉の腫れのせいでモチベーションが下がってしまったのも拍車をかけていました。

 しかして、この数日間ブログを更新できなかった主な要因は読書に夢中になってしまったことであります。私は読書を始めると寝食をマジで忘れ、何もかもを放棄して10時間ほど文章を読みふけってしまう悪癖があるのです。

 その読んだ本の中の一つ、『グッド・オーメンズ』について取り留めのない感想を書きなぐっていこうと思います。

感想の序章

 ネタバレなども含むので、内容を喋られる前に原作を読みたい!という人はひとまずこのページをブックマークとかリーディングリストとかに追加しておいてください(強欲)

 私が今回読んだのは角川文庫から出版されている『グッド・オーメンズ』。
 去年ごろか、Twitterの女オタク界隈で非常に話題になった作品であります。
 Amazonプライムビデオでドラマ版が配信されたのをきっかけに、日本で大人気作品となりました。それの原作を翻訳したものが、上記の上下巻にわたる小説版ですね。

 私が『グッド・オーメンズ』に出会ったのは忘れもしない2019年春ごろ、ちょっと早めに起きて次の講義まで時間があるし何かドラマでも見るかーとなった日のことでした。
 Amazonプライムビデオのトップページで紹介されていて、少し前に腐女子界隈(そう、隠すのも何なのでぶっちゃけるとBでLなジャンルを嗜む女子たちにこの作品は大人気なのです)でブームになってたし私も見てみようと思ったのでした。

 全6話で短いし、時間潰しにはちょうど良いかな…と思い再生した私。
 その時の私の間違いは再生時間を確認しなかったこと、そしてこの作品の面白さを見誤っていたことです。
 そして私は講義をサボったのでありました。

 そんなハイパー印象的なこの作品、原作は一体どんな感じなんだろう!?ってことで読み始めました。ドラマ版についての感想は大きく省きましょう。なんせこの記事は小説版についての感想なので。
 何が言いたいかというと、私はドラマ版視聴済みってことです。その視点で感想を語ります。
 ドラマ版が流行ったのも随分前となったこの時期、この記事にたどり着く人は多分同じようにドラマ版を視聴した上で小説も読了したような人だと思うので感想を共有できれば幸いです!

作品のあらすじ

これを読んでいる大抵の読者は知ってるとは思うのですが、念のため記しておきましょう。

 この作品は、ハルマゲドンという天使と悪魔の大戦争(世界の破滅)をテーマにした小説です。
 その戦争を引き起こす鍵となる反キリスト、悪魔サタンの息子が人間界に送られることになります。
 そのヤベー赤ちゃんを人間界でも重役どころに居る夫婦の赤ちゃんとすり替えて来い、と言われたのが悪魔クロウリー。しかし色々な行き違いの末、結局そのサタンのベビーは同日お産をしていた平凡な市民の赤ちゃんとすり替えられてしまうのでした。
 で、実はクロウリーはハルマゲドンに反対していました。彼は長年人間界で活動しており、その生活が楽しいから人間界を破滅させたくなかったのです。
 クロウリーと6000年の間つきあいがあり、敵であり友達のような仲の天使アジラフェールに人類の破滅へのカウントダウンが始まったと打ち明けるクロウリー。
 天使と悪魔が大戦争をするのは何年も前から決められていることであり、神の計画の一部だからそれに従うのは当然だ…というのが天使と悪魔の共通認識であります。
 しかしクロウリーと同じく人間界で長く過ごしていたアジラフェールもまた、内心ではハルマゲドンはちょっと気が進まないな、と思っていました。
 そして2人はだいぶ昔からある種の協力関係にありました。たまに互いの仕事にちょっと手を貸す、というような関係です。
 サタンの息子とあれど、ベースは何も知らない赤ん坊であり…つまり善と悪の両面から平等に、天使と悪魔が教育をすればあるいは…ハルマゲドンを引き起こすような子には育たなくなるかも?
 そんな訳で、2人は協力してハルマゲドンを妨害するべくサタンの息子をひっそりと見守ることにするのでした。

 ただし、彼らが見守ろうと決めた赤ちゃんはアメリカ大使の息子として育てられることになる、2人はサタンの息子だと思い込んでいる、実は平凡な市民から産まれた男の子だったりするのですが。
 そして本物の反キリストは片田舎の平凡な市民の元でごく普通に育てられるのでした。

 …はい、以上が『グッド・オーメンズ』のプロローグです!
 このように導入だけでも複雑怪奇な事情が入り組んだストーリーのこの作品。
 次項から私・闇堂の視点で感想を述べていきたいと思います(´ω`)ノ

感想本文

 え~、小説版を一通り読了しての感想を総括すると…。

ドラマ版すげえ。

 この一言に尽きます。はい。
 ドラマ版は非常にエンターテイメント的にアレンジされており、多大な想像力と作品愛をもって制作されたんだな…というのを思い知らされました。小説版を膨らませて構成されてると言いますか。
 というのも先にドラマ版から入った私からすれば「あれ!?このシーンないじゃん!」「え、ここって原作だとこんな感じだったの!?」みたいな部分がバンバンあったからです。
 しかし、かといって小説版がドラマ版よりつまらないって訳でもないのです。逆に言えばドラマ版になかったシーンや注釈、記述もあったりしてファンとして読んでてワクワクしました!
 ですが正直なところ英語の原作の翻訳なので日本人には若干の入りづらさがあるな、とも感じましたね。英文小説特有の会話文の書き方であったり、イギリス的なユーモアセンスによるコメディが日本人には分かりづらかったり…あと作品の文章テイストがちょっと固めかも。
 でも原作自体1990年に書かれてるみたいなんで文章の固さについてはしょうがないのかなー。
 まぁそれもまた、「原作読んでる!」って感じで読書家的にはグッドです(´ω`)b

 そういう訳でこの作品のガチの面白さを日本人として楽しむなら、ドラマ版の方が向いていると私は思いました。映像だと各キャラの行動が分かりやすく、コメディ部分も現代的で、あとキャラの魅力とかシーンのドラマティックさが300%増しで描かれています。
 そしてドラマ版を見てグッド・オーメンズにハマったら小説版で補完しましょう。そして再び沼にハマるのです。

では小説版の魅力を抜粋しつつオタク的目線で本格的に感想を書いていきます。

 まず書き出しからして萌える。クロウリーとアジラフェールの二人の出会いがいつ頃なのか定かじゃないけど紀元前4000年の時点でなんか相互理解しちゃってる感が良い。とても良い。
 クロウリーが天使をそっとつついたとかいう、ちょっとした描写が可愛い萌える。こりゃ読み進めるしかねぇ!!
 そして登場人物紹介で第二打をくらう。

堕天使というより、ゆるやかに下降ぎみの天使。

グッド・オーメンズ本文より

 ですってよ!!!クロウリーさん!!
 なーにそれもうアンタ本当はいい奴なんじゃん!天使なんじゃん!!ちょっとワル寄りになっただけで天使なんじゃん!!可愛いかよ!!

 でもってプロローグを終えてストーリーに入るわけなんだが、キャラ描写がまた良い。悪魔二人が潜伏しているところを、イギリス的ブラックジョークや英語圏の作品にありがちなドラマだったり音楽だったりの例えを交えつつ、分かったような分からないような回りくどい説明がされてるのが良い。外国のちょっと古めの本を読んでる感が、本の虫としては興奮する。

 あと、クロウリーが「めかし屋のちんぴら」って表現されてるのもまたクるんですよねぇ…。
 ベントレーを長いこと大事にしてるのはドラマ版でもピックアップされてたんですけど、なんか腕時計にもこだわりがあるみたいです。オーダーメイドで世界中の都市の時間が分かるんだとか。これは注釈の方で説明されてました。この注釈、ちょくちょく面白い説明があったりするのでチェックしながら読み進めるのをオススメします。
 ペンもお洒落なヤツ使ってるみたいで、現代の人間世界に馴染んじゃってるんだぜ!ってのをヒシヒシと感じるのであります。他の悪魔はネットだとか科学的・現代的なことはサッパリみたいで、クロウリーが余計に変に見えるようです。
 悪魔としてはお茶目というか、人間世界に毒された風のあるひょうきんさが表現されてて微笑ましく感じるのでした。

 そして、クロウリーが赤ん坊を受け取った後のシーンから語り手のキャラが入れ替わり立ち代わりしてちょっとゴチャゴチャしてきます。ドラマ版でも一癖あるサブキャラが大量に出てきて途切れ途切れに各キャラのシーンがあったのですが、小説版でもそんな感じです。
 いろんな人物がいろんな影響を及ぼしあう人間界ですから、そういう表現方法がこの作品には一番合ってるのかなと思います。
 シスター・オシャベリやアダムの父になるヤング氏の会話、そして予言者の子孫アナサマや魔女狩り軍の新人ニュートンの子供時代なんかが代わる代わる描写されていました。
 余談ですが、なんでこの二人の話がこんなド序盤にあるの?と不思議に思う人もいるんじゃないかと思うんですよね。…でもこの物語、実はわりかし「クロウリーとアジラフェールを主人公とした物語」というよりは「アグネス・ナッターの予言書を主軸とした物語」らしいんですよ。人物紹介の部分にひっそり、明確に書かれてました。
 そして小説版ではビックリするぐらいクロウリーもアジラフェールも登場シーンが少ないです。めっっちゃくちゃ影うすくて!つまり、その二人も結局物語の1キャラに過ぎないんですよね。
 ほんで、そのことを前提にするとアグネス・ナッターの子孫であるアナマサ、そして彼女と結ばれると予言されてるニュートンが序盤にピックアップされてるのは意外と自然なことだったりするんですよね。ドラマ版を見てた時のメインキャラ・サブキャラの概念がしっちゃかめっちゃかになりましたw

あと、クロウリーのお茶目っぷりと同じくらいアジラフェールのお茶目っぷりも描かれてましたね。駐車違反取締官の帳面を発火させたり、むかーしの誤植聖書にこっそりイタズラして原典にはない記述(神が東の門を守る天使に「炎の剣はどうした」と聞き、「どっかに忘れてきちゃった」と天使が答える…という笑)を書き加えたりして!天使さま何してんねんww
 アジラフェールがマニキュア塗ってるって描写もあって、少しギョッとしたりね。作中では「なよなよしてる」だとか「女性的な男性」だとか書かれてました。おいおい、そんな描写は腐りしモノどもの格好の餌だぞ…。
 まぁここで言うマニキュアって爪の手入れとしての意味だとは思いますけどね。女の子とかがネイルアートするようなアレじゃなくて目立たない色を塗るようなヤツでしょう。アジラフェールもクロウリーに負けず劣らずお洒落さんってことなのかな。うん、かわいい。

 そしてハルマゲドンを避けるべく、クロウリーがアジラフェールに協力してもらおうと必死にそそのかしたり言いくるめようとしたりするシーン。原作でもしっかりありましたともw
 アジラフェールの好きな映画だったり演劇だったりが、ハルマゲドンが起きたら無くなっちゃうぞ…と。この、相手の好きな物とか弱点しっかり分かってるんだぜ感が実にカワイイというか悪魔チックというか…ww
 クロウリーが巧妙に嫌な想像を掻き立てさせるのを「もうやめて…」「きいて…」って止めようとするのも可愛い。とても可愛い。
 で、ばっちり説得されちゃう訳なんですよねー!元からハルマゲドンあんまり気乗りしてないっぽかったけどもね(笑)

 あ、そんでもってかなり意外だった点なんですけど…ドラマ版ではクロウリーとアジラフェールが色んな時代で関わりを持って助けつ助けられつつしてたシーンにかなり尺が割かれてたじゃないですか。

あれ、小説版では全く描写が無いんですよね。

ビックリでしょ?なんか中世で演劇みてたり古代ローマ的な時代でお酒飲んでたり、処刑されそうになって助けられたり、本を奪って(だっけ?)アジラフェールが教会に追い詰められてるのをクロウリーが助けにいったり………ってな辺りがまるっと無いです。
 メッチャ萌えシーンだったけどドラマ版で新しく入れられたシーンだったみたいですねー。
 大使の息子を教育する所も2人が女装して潜入してたかと思うんですけど、原作では2人が別の人に依頼して教育させていました(笑)あれ、どこのどいつなんだろw

その代わりというか、原作では序盤に軽く黙示録の四騎士(戦争、飢餓、汚染、死)についての描写が入れられています。ドラマ版には確か無かったようなシーンで、彼らの正体が明らかにならないようふんわりと、かつ不穏さはばっちりアピールする記述でした。
 余談ですが私はドラマ版で四騎士がバイクで集合するシーンがハチャメチャに大好きです。めちゃくちゃカッコイイ!衣装やバイクの造形のこだわりが、マトリックスを彷彿とさせましたね。マトリックスで俳優に合ったサングラスとかコートをチョイスされてるのが凄くカッコイイと思ってるんですよ私。それ以来の衝撃でした、あのバイク集合シーンは。

 で、サタンの息子の11歳の誕生日。地獄の番犬が送られてきてハルマゲドンまで秒読みになるシーンです。アジラフェールが下手なマジックを少年少女に披露してバカにされ、犬は来ないしパーティーはメチャクチャ、天使はケーキまみれに。ようやく2人は何か間違いが起こっていることに気付き、本物の反キリストを捜しに行くのでした。

  …まだ上巻の半分くらいまでしか感想書いてないのにめっちゃ長くなってますね。
 ちなみに私はこの記事を午前3時から書いており、ここまでの文字数は6000字弱くらいです。なんてこった。

 この後も大まかな筋はドラマ版と同じように進められ、ちょっとややこしい文章で魅力的にドタバタ・ブラックコメディが書かれています。
 小説版の魅力は、なんといってもキャラたちの詳しい描写やドラマ版でイマイチ分からなかった点が事細かに書かれているところだと思います。
 アメリカ大使の息子になるはずだった赤ん坊のその後だとか、四騎士の仕事ぶりだとか、宝具的なのを運んでいた配達員のことだとか、留守録テープに閉じ込められた悪魔を開放してしまったテレフォンレディがどうなったのかとかね。
 最後にはめでたし、めでたしでハッピーになるようになっているのもこの作品の良い所ですね。
 もちろんそのエンディングは平凡に育ったアダムがやんちゃで普通の少年としての望みを実現させたからこそ、訪れたものなのです。

おわりに

 かなり割愛してしまいましたが、これにて『グッド・オーメンズ』の感想を締めさせていただこうかなと。
 ちなみに私は上下巻読むのに10時間くらい掛かりました…(笑)
 文庫本2冊なら6時間あれば足りるかなーと思ってたら案外かかっちゃいまして、いやはやまだまだ修行が足りませんな…。
 けっこう読むのには苦労しますが、ドラマ版を見て「もっと詳しくグッド・オーメンズの世界観を知りたい…考察したい…」ってな人は是非読んでみてください!

 そうそう、クロウリーがアダムとイブに禁断の果実を食べるようそそのかしたヘビっていうのはドラマ版でも明らかだったと思うんですけど。アジラフェールがフィクションの作者オリジナル天使かというとそうでもなくて、実は旧約聖書にちゃんと登場する智天使ケルビムだそうです。
 あいにくと聖書には詳しくないもので、曖昧な説明になってしまいますがその智天使ケルビムというのは固有名詞ではなくて天使の階級の名称らしい。上から2番目ですって。わーお。
 で、そのケルビムの中でも東の門を守っていたのがアジラフェールなんだとか。名前は創作だけど東の門を守る炎の剣をもつ智天使については本物の聖書にも記述があるみたい。元ネタがちゃんとあったんですね。
 でもハルマゲドン間際のアジラフェールは権天使までランクが落ちちゃったらしい。9階級中の下から3番目。なんで5階級も降格させられたんだろうね?
 やっぱり炎の剣を無くしちゃったからかしら…それとも普段のお茶目な行いのせいか…?w

おっと、余談考察も入ってしまいましたがこれにて感想終了!
 この感想を読んで『グッド・オーメンズ』が気になった人はAmazonプライムビデオのドラマ版、そして角川文庫発の上下巻の小説版にぜひぜひ触れてみてください!

ではでは(´ω`)ノ

コメント

タイトルとURLをコピーしました