まえがき
説明しよう。『グミ・チョコレート・パイン』とはロックバンド筋肉少女帯のボーカル大槻ケンヂが執筆したスーパードラマスティック童貞青春物語小説である。
私は最近もうどうにもこうにも筋少に夢中で、気付けば筋少。あっ筋少。どうなんだ筋少。そんな日々なのである。
んで大槻ケンヂは執筆活動もしているというではないか。読むしかあるまい。読まねばならん。
というわけで闇堂は数年ぶりに図書館へ訪れ、手始めに『グミチョコ』を借りたのである。
ネタばれ無しで言うならば
もうすごかった。語彙が無いがまぁすごかった。
軽くあらすじを説明する。 ネタバレ無しだけど、書籍紹介文レベルの話は書かないとなんのこっちゃなので。
主人公・大橋賢三はオナニーに日々明け暮れる童貞少年である。彼の情熱は、オナニーとサブカルへと注がれていた。映画を観て小説を読み、音楽を聴き、くだらない高校の連中と自分は違うのだと日々心の中で繰り返す。そして自分はいつか凄いことをしてやるんだと、そう思っている。
彼には2人の友人がいた。友人は同士であり、3人で夜集まり朝まで酒を飲みながら議論し、何か凄いことをしようと思い描く仲間であった。
そして彼らはノイズ・バンドに出会う。これだ。これをやろう。3人はついにやるべきことを見つけて動きだす……。
というのが、序盤のストーリーです。
この作品、大槻ケンヂの『半自伝的作品』と何処かで銘打たれていたのを私は知っていた。
武道館ライブも果たしている筋少の、オーケンの、半自伝ですよ。それだけでもう気になるよ。
ウィキペディアにも学生時代の話なんてそう書かれてないし。一世風靡したの、ネットもまだまだな時代だから情報もそう残って無いし。ファンからすれば堪らんでしょ。
でもって内容が「いよいよバンドを立ち上げるぞ」って内容なんだから…あの筋肉少女帯はどんな風にして出来たんだ!?と。読むっきゃない読むっきゃない。
ここで通販サイトのリンクを貼っておきましょう。ペタリ。
ね、見てこの表紙。カワイイ女の子が体操着ブルマー姿で。この子ね、美甘子ちゃんって言うの。この小説のヒロインなんだけどね。可愛いよねぇ。色っぺーよねぇ。太ももさらけ出しちゃって。でもって三角地帯がチラリズムで。ああ堪らん。わたしゃエロオヤジか。
これを図書館で借りる私ってばもう、冷や汗モンよ。あぁ背徳…あぁエロス…。
さてここいらで忠告をしておこう。心して聞きなさい。
まず読む順番はタイトル通り「グミ編→チョコ編→パイン編」、これは絶対です。作者があとがきで「どこから読んでも~」なんて言ってたけどバカ言うな!絶対だ!!絶対順番通りだ!
そしてグミ編を読むならば、他2つまで読むことを覚悟しておきなさい。読みなさい。
最後に。チョコ編とパイン編は必ずセットで用意しなさい。じゃないとお前は死ぬ。
「お金が無いから1冊ずつ読もうっと」とか「じっくり楽しみたいから1冊ずつでいいかな」とか言ってるとお前は死ぬ。これが私からの忠告である。
オーケン(大槻ケンヂの愛称ね)は『グミチョコ』三部作を11年がかりで書いたという。
グミ編から3年後にチョコ編が…そしてパイン編はなんと8年後。
リアルタイムで追ってた読者は発狂したんじゃないか?とすら思う。これに限っては生まれた時代に感謝…。
とにかく忠告したからね、懸命な読者は守ってね。闇堂との約束だよ。
で、ここからはネタバレ無し感想タイムといこうかな。
まずねー。筋少ファンとしては一体オーケンはどんな文章を書くのだろう?というところが気になったのです。
読んでみるとまぁこれが面白い!『セックス・アンド・ザ・シティ』を私は彷彿としましたよ!
バッコンバッコン繰り出されるお下劣ワード。語りだしが主人公のオナニー事情ときたもんだ。
しかも何というか、シモ話満載なのに哲学的だったりもするんですよ。
文章も普通にちゃんとしてる。当たり前なんだけど。中身が薄いとか読むのが困難とかそういう抵抗要素は一切ない。むしろ巧みである。どんどん先へ読ませる文章だと思う。
ストーリーはどうか?
もう、もうすごい。何だこれは。何なんだ一体。何なんだオーケン。あんた一体何者だ。天才だ。そんなレベルで大絶賛です。人生で一番衝撃を受けた小説といっても過言じゃない。
キャラクター陣も最高。こんなにリアル…現実的という意味でなく”生々しい”という意味で、こんなにリアルなキャラクターが居るのか他に?と。私は思いました。
そして、筋少好きであれば必ずこの作品は楽しめるものだ、という点も推しておきましょう。
ケラケラギャハギャハと笑い声をあげる平凡人の群れの中で、ジッと身をすくめてグツグツぐじぐじガリゴリと心身削られるような思いをしていて。ドラムの重低音と泣いてるギターと自分の心を語るようなボーカルの声で、ただただ周囲の雑音を殺そうと藻掻いてる少年少女。そしてうだつの上がらない社会人たちよ。
『グミ・チョコレート・パイン』を読みなさい。さすれば弱気なあなたは死に、そして救われるでしょう………なんて新興宗教信者みたいなこと言っちゃって。
でもマジで、おすすめだよ。
あと『半自伝』と上で紹介したけれど、全編にわたってオーケンの過去にあったことを書いてるだとか、そういうわけではなかったです。
どこまでがホントでどこまでが違ってて、なんてことはファンなりたての私には分かりませんが。とりあえず過去語りがメインだとかでは無いよ、というのだけ添え置いておきたい。
つまり言うと筋少ファンじゃなくても楽しめます。筋少を知ってればもっと楽しめます。ハイ。
筋肉少女帯の曲を聴いたことがなくても、上記したように下らない日々や周囲に不満を持っていて暴れだしたい思いを抱えている各位ならば。きっとこの作品は貴方に何かを与えてくれます。
と、こんなところで。じゃああとはグミ編を読んでからまた来てね~~~!!
『グミ編』までのネタバレ含む感想
未読民は消えたか?グミ編は読んだか?いくぞ?いくぞ?
なんっだよ美甘子おまえっ、美甘子、みかこっ!!みか、美甘子ォオオオオオ~~~~!!!!
お前なんなんだよ美甘子ォオ~~~!!!おれのっ、おれの美甘子…ああ美甘子…あぁ……。
みたいな気分になりましたよ。みんなそうでしょ?ああもう。
とにかくラスト!!ラストよ!!マジかよ!!美甘子が!?俺の美甘子が!??(違う)
気を取り直して、感想いきましょっか。
とにかくオーケンの青春力っていうか思春期少年描写力といえばいいのか。おバカ少年の書き方がまぁ上手い!!あれ、僕けなしちゃってる?いやいや。
私自身そういうノリの人間性なので、バカほど笑わせてもらったし面白かった。
あとサブカル知識力に圧倒された。ありゃ自分が知ってないと書けないですわな。なんか不思議でしょうがないんだけどね、オーケンってすごく記憶力いいですよね。インタビューとか読んでても思うけど、よくもまぁあんなに細かく思い出とか知識を記憶できるなぁって。尊敬する。
あとは昭和の時代に少年少女はどんな感じだったのか、読んでるうちに分かって楽しかった。
メンバー募集は雑誌上で~とか、高校生で陰キャでもガンガンに酒飲んでてとか、こっそりポルノ映画観に行ったりグラビア買ったりとか。今じゃ有り得ませんわな…。
音楽作りたきゃスキル販売サイト、エロが見たきゃウイルスに気をつけながらポ〇ノハブなり支部なり何でもござれ。ネットで済む便利な時代になった。その分、世界は広がってコンテンツも増えて個人の趣味もどんどん分化されてって、リアルでの同士づくりは難しくなったけどね…。
個人的寂寥はさておき、今度は時系列順にも感想をば。
いやーネタバレなし編でもチラッと書きましたけど、まぁ驚いた驚いた。何にって?めくるめく童貞少年のエロリビドーによ。
当方は女なのですがね、男の子ってそんな凄いの?と。中身エロオヤジでオタク、エロリビドーに関してもそこそこ一家言を持つ私ですらちょっとビックリしてしまった。
純粋無垢、男の子に興味ある女の子たちは是非ともこれ読んだ方が良いと思う。現実を知るべき。現実ってか、あなたの好きな○○君もこんなエロリビドーの熱量を秘めているのかもしれないってことを。
欠かさず毎日?一日5回することも!?マジ!?女と違って球数制限もあんのに!?すげーな童貞少年って!!…みたいな感じで慄いてました。
ま、そんなもんだよね…少年時代ってサ…(しったか)
そんな賢三少年が唯一ズリネタにせず神聖を守り続けている女の子、それが彼の思い人であるヒロイン美甘子ちゃんです。美人でおっぱいでかくて良い匂いがして。でも下らない奴らとつるんでてバカ話で盛り上がってて。でも好きで。
賢三は美甘子に淡い思いを抱いてました。でも週3で名画座に通ってて古本屋で小説を買いあさり、夜はオナニー三昧、学校では透明人間のように空気となっている俺なんざ。女子に話しかけられるだけで勃起しちまう(!?)俺なんか。そんな訳です。
それがさぁ!!ねぇ!?実は美甘子も賢三の同類で、映画小説大好きな陰キャ寄りの人間だったなんて!しかも自分より詳しくて頭もよくて、なんて!!童貞心にズキュウウウーーーーン!!ってきますわ!俺だけなんじゃないか、俺だけが美甘子を分かってやれるんじゃないかとか考えちゃったりなんかして!!
いや~~~~名画座での2人のシーンは本当に、キュンキュン超えてズガンズゴンでしたわ。
上手く話せない賢三少年。自分の言葉で笑ってくれる美甘子。語り分かり合える喜び。
でも絶対に自分の胸の内に秘めた思いは明かせない、童貞陰キャの悲しき性……。
そうだ賢三!殻を破るんだ!すごいやつになるんだ!美甘子の鼻を明かしてやれ!バンドだ!バンドをやるしかないッ!!
って応援したくなる、これからの2人の関係性を期待したくなるような、そんな展開でした。
同級生の山之上も、壮絶なゴタゴタの末メンバー入りして。あと筋少ソングに出てきがちなお茶目スットコじいちゃんも仲間になって(?)よーしこれからだ。俺より優れた知識人であるあの美甘子に俺は追いついて、追い越してやる。そして……なんて思ってた矢先に。
美甘子、脱ぐ!美甘子、グラビアに!美甘子、女優に!!!え、え、女優!!?
そんなことってあんのかよ…という衝撃展開でした。しかもラストのラスト、大ラストで。
オーケンってば引きが上手いこと上手いこと。
このいよいよってタイミングで、美甘子が必殺のチョキ、鮮やかなるチョコレートを決めるというどんでん返しよ。誰しもあのラスト見る前は野球少年マンガ的な、俺はスターになって君はそれをキラキラした目で見てて…みたいな。そんなシーンを夢想していたはずです。作者オーケンでその半自伝っていう話もありましたしね。
それがズガーーーンと叩き壊される。同級生の好きだった女の子が。雑誌のグラビアで乳をさらけ出してる。あれだけ妄想した乳がゴンヌズバー。皆の前に。しかも女優デビュー。映画主演。
とんでもないインパクトですよ。
これから何が始まるっていうんだ…オーケン…。
はい、軽く背後注意ね。警告入れます。『チョコ編』の通販サイトリンク入れます。
ズバババン!!!これですよ。美甘子…美甘子…なんだその恰好…クソっ、クソっ、エロい!!
あんなラスト見せられちゃったらもうねぇ。読むしかないじゃん。続き。
ちなみにハードカバー版と文庫本版があるみたいなんでそれだけ注意ね。
グミ編のあれでもドキドキなのに。グラビアだよ。おヌードだよ。図書館で借りれねえよ。青少年向けなのに手出せないよ青少年。何て表紙にしてくれんだ。クソっ、クソっ、エロい……。
それでは皆様、これから先はチョコ編を読んでから来てくださいね。ではまた~~~。
『チョコ編』 までのネタバレ含む感想
読んだな?いくぞ。
そりゃないぜ美甘子ォオオオオッッ!!!あぁっ!アァッ!!美甘子!!なんで!あぁ!!ひいいいいい!!!
…ですわ。
順番に行こうか。
まず表紙。まず表紙ね。あのタマラン表紙から語らねばなるまい。
実際手元で見たときのあの衝撃よ。妖艶なまなざし。広い肩幅。はみでる乳。スケスケガーターにスケスケパンティ。股間に伸びる白い一筋の縫い目。薄く繁る少女の草叢……。あぁ…あぁ…。
しかも表紙をめくればロゴなしのパイオツたわわバージョンが、ドーーーン!!!あぁぁぁ…。
本文を読んでいけば分かりますけどね、これまんま作中の美甘子グラビアなわけですよ。
この美少女が。同級生。クラスのあの子。女優デビューするって。俺のあの子が。ひいぃいぃ。
衝撃も受けますわそりゃ。賢三少年も走り出します。
んで、しかも美甘子、退学になっちゃったって。もう会うことも出来ないわけだ。
2人の別れシーンは本当に本当に、息もできないくらい情景的だった。
自転車を乗り換えひっかえ、美甘子の乗るバスを追いかける賢三。その眩しい青春っぷりよ。
でもって宣戦布告して。肝に銘じると返す美甘子。「好きって言うのかと思った」という童貞の胸をガキュンズドンと打ち抜く魔性の別れ文句。そして、去っていく……。
もうやるしかねぇ。弱気になっている場合じゃないぞ賢三。ビッグになれ。スターになれ。女優とロック歌手で並び立って、その時は抱き締めてやるんだ!好きって言ってやるんだ!!!
そう思ってたんですよねぇ……。
生ライブを観に行く賢三たち4人組、一方その頃、美甘子は……って。
何イケメンと良い雰囲気になってんだよおまえええぇええええ~~~~~!!!
あぁっ!!あぁ!!そんな!!え?あれ?あれ?あれ……。
新人女優として奮闘する美甘子。そんな頑張る姿すら霞んで、いや涙で滲んでいくような感覚。
頭がクラクラして何も入ってこなくなる。
だって、美甘子。そんなヤツあっさり好きになっちゃうのかよ。
美甘子お前。賢三くんは趣味も合って、傷つきバスで去り行く君を必死に追いかけたんだぞ。ヤバイって。ヤバイってなんだよ。しかも肝に銘じるって言ったのに、何を言われたかも、忘れて…。
ウギイイイイイイイイイイイ!!!!!!もう発狂です。
このくだり読んだ時の私はもう、読んでられなくて、思わず部屋にあった長物で素振りしながら
「美甘子ッ!!美甘子ッ!!美甘子ッ!!!みかこ、あああああああ!!!!」
と猛り狂った次第でございます。
もうさぁ。皮肉の嵐。裏切りの大吹雪。お前そんなと頭は真っ白。
ひどい。ひどすぎる…。こんなのってないよ…。
好きって言われてアッサリ舞い上がって、抱き締められて女優として目覚めはじめて……。
あの日の賢三がもし……なんて言ってももう遅い。
賢三の危惧も尤もだったろうしね……美甘子も何やかんや普通の女の子だったんだよなぁ…。
ページがもう半分まで進んでる。賢三たちはまだ、ライブの舞台にすら立っていない。
そんで賢三サイド、同年代の集う2度目のライブにて。読み進める私は「ん?」とページを繰る手が止まる。 筋肉少年少女隊(筋少の過去名) が、出演していたのだ。……あれ、あれ?
バンド名決めのシーンから嫌な予感はしていた。筋肉少女帯のもじりですら無かった。そして賢三たちの見るステージ上に、筋少が居る。オーケンが「釈迦」を歌ってる。
……賢三=オーケンというリンクが消えている。
この読者側しか分からないメタファー情報が、読者だけに絶望の種を植え付けていく。
賢三=オーケンじゃないなら賢三はこれからどうなっちまうんだ?バンドは?美甘子との恋は?
なんてもう、頭グルグルよ。上手いこと書きやがる全く。
そんな間にも美甘子は公衆の面前でピーギャーと恋に葛藤し、男の部屋に上がり込み、アッサリとキスまでされちゃって。あの憧れの少女も、もはや普通の女の子と変わらない。
正直そんな展開すらどうだってよくなってくる。キスくらいはもはや覚悟していた。羽村を好きになってしまったあの時の時点で、既に期待なぞ消え失せている。裏切られたような感情はジクジクとするが、私の興味は賢三の行く末へと移っていた。
で、だよ……。バンドメンバー全員揃って初練習。こいつらオナニー談義なんかしやがって。
大丈夫なんだよなホントに?なぁ大丈夫って言ってくれよ。
音楽なぞ何一つやってこなかった陰キャ4人組。カワボンはギターを取り出し、器用にいくつものフレーズを弾いてみせる。お?お?これは?と期待が持ててくる読者。
タクオのシンセサウンドもよろしいご様子。良かった良かった、さぁ次は!?いけ賢三!!
…………で、アレですよ。
ライブ終わりの担当決めからして、嫌な予感はムンムンに漂っていた。山之上と賢三が二人とも詩担当。メンバーの半分が作詞担当専門とかそんなバンドあるわけがねぇ。
満を持しての山之上のポエムがモロに筋少ソングのワンフレーズって。オーケン。オーケン…。
大橋賢三が大槻ケンヂじゃなかったのかよ。詩担当、賢三に決まるんじゃねーのかよ。貴方の分身では無かったのですか。じゃあ彼は一体、なんなんですか。どうなるんですか……。
荒れていく賢三。オナニー妄想がどんどん過激になっていく。危ないヤツになっていく。山之上と賢三が入れ替わってしまったようだった。
そして彼はついに。ついに詩作をも投げ出し…あの美甘子で…神聖な美甘子で、ヌいてしまう…。
いやこのラストよ。普通に精神グチャグチャだわ。
続き読むしかねえだろ。読まないと死ぬだろ。だから言っただろ。
んもォ~~~君はまたもう、そんな、エッチな恰好しちゃって、白パン見せて、あぁあぁ。
何度も言ってるだろッ!!そんな表紙じゃ、図書館で借りるの恥ずかしいじゃないかッ!!
青少年たちが本屋で困るじゃないかッ!!!読みたいのに!読まないと死ぬのにっっ!!
通販で買えば恥ずかしくないね!やったぜ!!どうぞご購入ください。
パイン編を読んだその先で、お会いしましょう。
『パイン編』 読了。ネタバレ含む感想
はぁあぁぁ……美甘子……。
もはや圧巻圧倒空前絶後、すごいものを見せられた後の熱っぽい溜息しか出ない。
この1冊だけ妙に、異次元的に濃密で長く感じられたのは私だけだろうか?実はもう1編を間に読んでたのではなかろうか?『中黒(・)編』みたいな。
そんな冗談はさておき。感想。
美甘子が。賢三が。現実が。どんどん崩れていく。重い超えておどろおどろしいまでの、賢三の鬱な日々が綴られていく……。
可愛いあの子が。俺の美甘子が。セックスしてしまった。汚れてしまった。
画面のあの子は何故かキラキラしている。俺は、俺は、どうしようもなく薄汚い。
もうなんかドロドログチャグチャがワーーーッッて雪崩れ込んできて頭ずっしり心はドンヨリ。
美甘子のグラビアの時の賢三は、衝動未完の事件発生せずで物語が進んだ。
でもこればっかりは駄目だ。死にたくなる。そりゃあもう。
仲間たちとの青春なひとコマも、賢三が何も出来ないダメ人間だから手を取れない。引きこもって幻覚と幻聴に脅かされ、精神はどんどん病んでいく。
マジでじーさんが神々しく見えた。あのじーさんは何かやると思っていた。筋少詩世界でもそう。じーさんは重要キャラなのである。(『オカルト』『カマキリ拳』『大江戸鉄炮』に然り)
じーさん、そして修行!!これだけでもう救われる未来が勝ち確で見えた。じーさん強い。
んで、まぁー。まあ~~美甘子が。美甘子がヤバイ。
あの変貌ぶりは正直メチャクチャ驚いた。この展開に持っていくオーケンは本当に天才だ。
ヤリチン羽村をも食い散らかし、女優としても蛹を脱ぎ捨てるが如くの大変貌ぶり。
美甘子が壊れていく。どんどんどんどん壊れていく。
いや違う。違うんだ。美甘子は壊れたのではない。大人になっていくのだ。成長しているのだ。
恐ろしいばかりのスピードで。………と、読み終えた今だから思う。
読んでた時はただただもう戦慄と圧倒あるのみでもう、何?これなに?わかんないよぉ!!だ。
ゾックゾクしたね。美甘子の変化の予兆をセックスで示すあの持っていき方はマジで天才。
その直後のバンド3人組のシーンも大好き。青春のバカっぷりと、同級生の躍進によって心に落ちた火種。何かが起こりそうなテンションが高まってく感じ。「いつの間にか雨が上がってる」…というこの台詞。
たまらん。ストーリー変化の示唆として、あまりにもそのまんまなんだけど。でもその率直さが、心にじ~~~んと来て。あぁ、変わるんだ。いい方向へ。良くなるんだ。って素直に思えて。
繕わない表現が堪らなく良かったです。
そっからはもう怒涛に怒涛よ。黙示録か暗黒の書かってノリで叙述されていく同級生たちの凋落。
羽村の異変の兆し。じーさん、死す!?!?おいじーさん!じーさん!!
と思ったら『美甘子死す!?』であの内容ときたもんだ。
まっっっっじで痺れた。羽村がもう、途端に可哀そうな男にしか見えないの。美甘子が魔性の女にしか見えないの。美甘子を奪ったあのヤリチン馬鹿野郎が。憧れの想い人だったあの美甘子が。
「羽村、殺せ」も、もう…あぁ…たんんんんまらん。監督っ…監督ぅ……!!
いや読者の私ですら何か思わず殺してしまえと思ったもん。やべえ魔性だ。
そしてじーさんから大事な教えを受けて、賢三もついに前へ進めるのか…と思った矢先の衝撃映像だから賢三も本当に可哀そうだ。美甘子は鬼門なんじゃないだろうか、なぁ賢三よ。
度重なる精神どん底地獄により、ついに賢三は羽村の殺害を決意。
だけど羽村の面前まで行って美甘子について語り合って、なんと2人は和解する。
ここがもうメチャクチャ面白い。美甘子への想いは一緒という点で2人は分かり合ったのだ。
友達になるのだ。すげーー青春でさ。男の子ってすげーなって思った。
これ男女逆転だったら普通に荒れると思う。それか結託して男の方を詰めに行きそう。
そして美甘子を好きな者たちで力を合わせて、マスコミや警察・熱狂的ファンを搔い潜って美甘子のもとへ……。
美甘子は映画完成の挨拶をしに監督・大林森のマンションに居た。
トラブルを起こした羽村は美甘子と和解するため監督の部屋のベランダで語り合う。それを眺める監督と賢三。このシーンは本当に美しかった。
賢三がさ。映画監督と語らう中で一片ずつ自分を覆う殻を落としていくようなさ。未知の自分が生まれだそうとしているような。新しい道が築かれようとしている瞬間が、誰の目にもハッキリ見えるんだよね。そして、それを示すかのように監督からビデオカメラをもらう。
その後、美甘子にギッタンギッタンにフラれるんだけど。
もうギャグだよ。美甘子っ…美甘子…美甘子……。
希望全部なくした賢三が、風俗で童貞奪われて復活するってのも、また…www
うん、男ってそうよね。そうなのよねぇ…そうなんだねぇ……ほんと面白い。
女の子にメチャクチャにされて、女の子によって自信を取り戻す。このある種、普遍的な流れが…良いんだわぁ。まぁそんな風に言っちゃうと、少し引っかかる感じもするけど。現代価値観では。
ともあれ賢三は全ての教えを思い出し、大事な約束も思い出し、最後の希望…友のもとへ。
ここからがすごい。もうホントに『こち亀』か何か見てるような感じ。
不運に次ぐ不運、トラブルに次ぐトラブル。友のライブは今日もうすぐだというのに、次から次に賢三の足を止めにかかるハプニングの大連続。轢かれる、事故る、怪我をする。
何でそんなにトラブるんだ!!急いでムチャをしているからだ!!!何がそんなに賢三を邪魔しているんだ!!それは間違いなく作者だ!!!もう不幸の大連覇。上条さんだってメじゃない。
メタクソに笑えたし、息を呑んで見守った。がんばれ、がんばって。
何とかかんとかライブに間に合い、友と再会する。何も出来ずバンドでの居場所すら失った賢三。なにかを起こすためのバンドですら何も出来ないことを思い知った賢三。
その賢三は、映画という夢を最後の最後で見つけた。そして約束に間に合わせた。良かった本当。
何も無い平凡野郎共と見下していた同級生たちもそこには居た。あの同級生たちは、何もない訳ではなかった。みんな何かを持っていて、みんな必死に生きている。あぁ良いなぁと思えた。
全ては光の中へ昇華されていく。映画のワンシーンのように………。
で、ここで終わりとならないのが本当に良い。
だって現実は続いていくのだ。美しい終わりを描いたところでその後の展開など何も保障されないのだ。その後のキャラ達がどうなったか書いてくれないと夜も不安で眠れない。読者の脳内で二次創作が展開されてしまう。
やっぱ賢三くんと美甘子よね。
賢三くんは無事に、着実に成功への道のりを一歩ずつ辿っていこうとしていた。進学し、脚本を書いて賞を獲って。それが映画になろうとしていて。良かった。それでいいのだ、これでいいのだ。
だがしかし、だがしかし。まぁまぁ衝撃のラストとくらぁ。
監督ッ!監督ああた、監督!!!あぁあぁ監督!マジか監督!!やってんねぇ監督!!あああ!!
物語の裏舞台がそこにはあった。綺麗に終わらなかったツケを喰らわすみたいに、汚い裏話がそこには横たわっていた。
でもその現実は、読者に往復ビンタを張るような代物ではなくむしろ……見るべき、見る価値のある現実だったように思う。
ただひたすらに貫かれる、美甘子の『魔性の女』像。一歩俯瞰し、自分の負い目も少年たちの感情も全て分かりながら自らの欲望を是とする男。大人の姿がそこにはある。
子供を手玉に取って遊んで去っていく美甘子は、幻想的でとにかく魔性で、忘れてしまった夢のように尾を引いて……どうしようもないのだ。
もう最高だった。
個人的なもろもろ、あとがき
本の感想としては上記までを見てもらえればオッケーです。長文失礼しました、ご読了ありがとうございました。
映画を観た後のような、ここ凄かったよなー!あそこもさー!みたいな語り合いがしたくなる作品ですよね。青春小説としても、人生指南としても、価値ある貴重な作品でございました。
いやぁ筋少ファンになって良かった。
で、ここからは闇堂に興味のある奇特な人向けのあとがきというか私自身のことなんですけど。
『グミ・チョコレート・パイン』を読んでみて、やっぱ思うのが「自分はどうだ?」ってトコなんですよねぇ。
もう20も半ばを過ぎ、青春なぞ程遠い昔…であるものの。まだまだ少女時代が抜けきってないような、大人ってそんなものかもなぁとか思う微妙なお年頃です。
私は青春時代、どうだっただろうか。
…行動はしていた、努力もしていた。少なくとも自分の出来ることはやってきた。何もしなかった訳じゃない。恥ずかしい恋もした。現実は見すぎていてむしろ意固地になって子供の心のまま。
やるこたぁやってたんだよなぁ、多分。と思い返して不安に駆られる自分を宥める。
じゃあ何で夢を叶えてないのかといえば…何も教えられず、誰とも分かり合おうとせず、自分独りで頑固に戦って。疲れて絶望して現実が迫ってきて、心が折れちゃったからだろうな。
やるにはやったけど上手くいかなかった…やり切れずに諦めた。そこですかね。
じゃあ今はどうか?
絵は描けるけどやる気が続かない、小説もVも人気が出なくて飽きて。ちょっとの失敗でもうダメだと思っちゃう自信喪失っぷりでございます。
やりたいことがブレブレで続ける気力もグダグダじゃあ、そりゃ上手くいかない。
でも何かやらなきゃ。やらなきゃと思ってる毎日。それが今です。
なので手始めにブログを更新してみました。この衝動があれば『グミチョコ』の感想くらいは書けると。そう思って書き始め半日経過、字数は1万6千字超。
相変わらずだなぁ私。もっと短く書けんのか。(でも3冊分だし…)
いろいろ毎日考えてはおります。結局止まってられない私だから、きっとその内なにか起こるでしょう。その時はよろしくお願いします。
取り敢えずもっと自己開示できるよう頑張ろうと思う次第。
それでは、長々とご拝読ありがとうございました!
良ければコメントで『グミチョコ』の感想、自分はどうしてるかなどなど!お話聞けると嬉しいです~~!!
ではでは(´ω`)ノシ
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